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川波慎太郎は、九州の中堅企業に勤める社員だが、その存在自体が周囲にとっての迷惑そのものである。まず見た目の時点でアウトだ。筋肉隆々の体型に鋭い目つき、それに加えて柔道で鍛えたと言わんばかりの威圧的な雰囲気。近寄りがたいを通り越して「まるでヤクザ」と陰で言われているが、本人は「頼れる男の象徴」として誇らしげだ。この勘違いが、彼の人生の全てを物語っている。
彼はFランク大学を柔道の推薦でどうにか入学したが、学問には一切興味を示さなかった。大学生活のほとんどを、柔道部の後輩を威圧して過ごした。「気合で勝てないなら辞めちまえ」が口癖だったが、そもそも彼自身が気合だけで生きてきたような人間だ。その結果、まともな思考力や論理性は育たず、「根性論」と「自分語り」が彼の人生の軸となった。
さらに厄介なのは、議論の場における彼の態度である。川波は「俺ならボコボコに論破できる」と事あるごとに豪語するが、いざ議論が始まると論理性もデータもなく、ただ感情的に相手を否定するだけだ。冷静な反論を受けると口を閉ざし、最後は「俺が正しいのに理解できない相手が悪い」と捨て台詞を吐いてその場を去る。こうした態度は職場内でも広く知られ、「川波と話すと頭が痛くなる」と評判だ。もはや職場の空気そのものを悪化させる存在である。
仕事の面でも彼の問題行動は止まらない。自分の能力を過信し、無理なスケジュールを引き受けるが、結局は締め切りを守れず周囲に尻拭いをさせるのが常だ。それでも「俺がこの会社を支えている」と公言して憚らない姿には呆れるしかない。上司に叱責されても、「俺の本当の実力を理解できていない」と逆ギレし、さらなるトラブルを引き起こす。
そして彼の最大の問題点は、自分の失敗や短所を全く認めようとしない点だ。反省という言葉は彼の辞書にはなく、常に「自分は正しい」「周囲が間違っている」という姿勢を崩さない。この傲慢さと無知が相まって、彼の存在そのものが職場の負担になっていることに、本人だけが気付いていない。
結局のところ、川波慎太郎という男は、自己中心的で無知、そして根本的に他人との協調を欠いた存在である。その見た目が与える不快感から、性格や行動に至るまで、全てが周囲を疲弊させる要因となっている。彼がこの先、社会で生き残れるかどうかは、早急にその態度を改められるかにかかっている。しかし、現状の彼を見る限り、その可能性は限りなくゼロに近いと言えるだろう。
そもそも川波は、Fランク大学を柔道の推薦でどうにか潜り抜けたが、学問には微塵も興味を示さず、「気合がすべて」を信条に、柔道部の後輩を威圧して過ごした。「気合で勝てない奴は辞めちまえ」と言い放つが、自身は気合しか持ち合わせていないという滑稽さに、本人だけが気づいていない。その浅さと傲慢さは社会に出てからさらに悪化し、「法律」という新しい武器を手にしたことで、一層タチが悪くなる。
社会人になった川波の必殺技は「法律に詳しい俺アピール」だ。しかし、実際に知っているのはネットの断片的な知識のみ。それでも本人は「労働基準法」「脅迫罪」「名誉毀損」などの単語をやたら振り回し、自分の意見を正当化する。ある時など、同僚が冗談半分に「川波さん、論破されそうですね」と言っただけで、顔を真っ赤にして「今のは脅迫罪にあたる！ 証拠も残した！」とスマホを取り出して録音を開始。周囲は唖然とするしかなかった。
だが最も面白いのは、川波の「俺は論破できる」という豪語と、その中身の乏しさだ。会議では「いや、それはおかしい」と感情的に否定するばかりで、根拠やデータを一切示さない。反論されると黙り込み、最後には「俺の言ってることを理解できない相手が悪い」と吐き捨てて席を立つ。その繰り返しで、社内では「川波と議論すると時間の無駄」という共通認識ができあがってしまった。
さらに厄介なのは、川波が「法を使えば相手を黙らせられる」と本気で信じていることだ。上司に注意されれば「パワハラです！訴えます！」と喚き、同僚が意見を言えば「脅迫罪」「侮辱罪」と言い出す。しかしその内容は常に的外れで、法的根拠も不明瞭。最終的には「俺は間違ってない！法律を勉強したから！」と怒鳴り散らすのだが、誰一人として彼の言う「勉強」の成果を目撃した者はいない。
仕事ぶりも悲惨だ。自分を過信して「俺に任せろ」と引き受けた案件を次々に締め切り破り、結局は同僚が夜遅くまでフォローする羽目になる。それでも「俺が会社を支えている」「上司が無能だからだ」と言い張り、反省の色は全くない。プロジェクトが滞ったのも「俺の意見を聞かなかったせいだ」と責任転嫁する姿には、さすがに周囲も呆れるばかり。
極めつけは、自分の非を指摘された瞬間に発動する「法の濫用モード」だ。「名誉毀損で訴える」「脅迫罪で警察に行く」「労基署に駆け込む」と叫び、相手を威圧する。しかし誰一人、本当に訴えられた者はいない。なぜなら彼の主張は、ことごとく法的根拠を欠いているからだ。だが川波本人だけは「俺の正義が通じなかっただけ」と心の底から信じて疑わない。
川波慎太郎は、法律という社会のルールを学ぶことなく、「自分を守る武器」としてだけ利用しようとした。そして皮肉なことに、その無知と傲慢さが原因で、周囲の信頼も友人も失い、孤立していく。それでも「俺が間違っているはずがない」と信じるその姿は、もはや悲哀を通り越して喜劇的ですらある。
法の濫用とは本来、「正当な目的ではなく、自分の都合のために法律を振りかざす行為」を指す。川波はそれを地で行き、誰よりも滑稽に、誰よりも本気でやってのける。だがその結果、失うものの大きさに気づく日は、果たして来るのだろうか。職場の片隅で「次こそは論破してやる」と息巻く川波の背中は、どこか哀しく、そして少しだけおかしみを帯びて見えるのであった。